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視察報告

川西市視察報告
「何をやめるか」を決められる行政経営

― 川西市行政経営基本方針に学ぶ ―

自主財源の厚みを示す財政力指数が0.64と、三郷市(0.90)より厳しい条件にある兵庫県川西市は、370事業すべての見直し市立病院の民間移管計画期間を市長任期に合わせた8年計画など、「何をやめ、何に集中するか」を決められる行政経営を実践しています。予算規模の縮小が現実になりつつある三郷市にとって、数年先を行く自治体の実際を現地で確かめてきました。

令和8年8月4日(火) 兵庫県川西市議会 創政MISATO 会派視察
TAKEAWAYS

結論 ― 三郷で考えたい7つのこと

まず結論から。以下は川西市からの助言ではありません。川西市の実践を現地で見た私たち創政MISATOが、三郷市に置き換えて考えたい7つの論点です。

以下、それぞれの根拠となった川西市の実践を報告します。

ABOUT KAWANISHI

川西市とは ― 人口はほぼ同じ、条件は対照的

兵庫県の東端に位置し、東側は大阪府池田市と隣接。大阪・梅田まで電車20〜30分のベッドタウンで、府県境には一級河川・猪名川が流れます。人口規模は三郷市に近いものの、地形や財政の条件は対照的です。

川西市三郷市
人口約15万2千人約14万2千人
地形起伏が多く、北へ行くほど山地。南北に細長い関東平野の一部でほぼ平坦
都心アクセス大阪・梅田まで電車20〜30分都心まで電車・高速道路でアクセス
経常収支比率98.6%100.7%
財政力指数0.640.90
将来負担比率71.6%51.2%
人口見通し推計では12万人まで減少の見込み現状は微増傾向

経常収支比率・財政力指数・将来負担比率は、いずれも令和6年度決算の数値です(出典:兵庫県公表「財政状況資料集(令和6年度)川西市」、埼玉県公表「財政状況資料集(令和6年度)三郷市」)。人口は川西市が市公表の推計人口・令和8年6月末現在151,868人、三郷市が市公表の年齢別人口・令和8年6月1日現在141,804人。両市は硬直度の指標が近い一方、自主財源の厚みを示す財政力指数と、将来の負担を示す将来負担比率では川西市の方が厳しい条件に置かれています。議場では本会議のライブ配信・録画を実施し、従来1週間かけていた編集をやめ、翌営業日午後には公開する運用も紹介されました。

PREMISE

率直な前提から始まった説明

説明は、率直な前置きから始まりました。財政状況の指標で見れば三郷市の方が良い状況にある、自分たちは厳しい条件の中でどうしてきたかを話したい——そういう趣旨です。飾らない実例と数字に基づく、率直な情報提供をいただきました。

説明の中では、「経常収支比率が97%という中で」新しいことに投下できる財源が1割にも満たないこと、予算規模が縮小するということは何かをやめなければならず、これまでどおりでは予算編成ができないことが語られました。この認識は、前年度比マイナス予算が20年ぶりとなった三郷市の現状にそのまま重なります。

この「97%」は視察当日の説明で述べられた数値です。兵庫県公表の財政状況資料集では、川西市の経常収支比率は令和3年度94.8%、令和4年度98.5%、令和5年度100.0%、令和6年度98.6%で推移しており、いずれの年度とも一致しません。本ページでは発言をそのまま記載したうえで、比較表には令和6年度決算の確定値を用いています。

川西市役所の委員会室で説明を受ける創政MISATOの議員
川西市役所にて。企画政策課の皆様から行政経営基本方針の説明を受けました
FRAMEWORK

行政経営基本方針の骨格

最も刺さった設計 ― 計画期間を「市長任期の倍数」に合わせる

川西市の行政経営基本方針は、第6次総合計画と完全に年度を合わせた令和6〜13年度の8年間。従来の「前期5年+後期5年」の10年計画を改め、市長任期4年の倍数に揃えました。市長が任期途中で前計画を引きずる「やりにくさ」を解消し、民意を受けた市長の考えを計画に反映できるようにするためです。5年区切りでは技術や社会状況の変化に追随できない、という実務上の理由もあります。前期・後期に分けず8年間を毎年ローリングし、4年目(市長選のタイミング)に見直す設計。教育・子育てなどの個別計画も同じ8年スパンに揃えています。

人口についての考え方 ― 「奪い合わない」

「近隣と人口を奪い合うことは考えていない。
住んでいる方の満足度を上げる

推計人口が12万人まで減少する見通しを直視したうえでの、明確な方針転換です。

3つの取組み

CASES

具体的な9つの取組み

CASE 4|最大の事例
市立病院の民間移管 ― 財政と医療の質を両立
市直営時代は毎年約10億円の補填が12年間続き、建て替えも必要な状況に。民間病院と統合する形で再編し、建設費の市負担は半分に。効果は財政面にとどまらず、救急の応需率が大きく向上し、最先端医療の導入も進みました。移管後4年目で黒字経営。民間側にも建設費のメリットがあり、相互に利のある再編となりました。「最初にお金の話をしたが、本当は連携と協働で生まれる力の方が大きい」という総括が印象的でした。
CASE 1
370事業すべての見直し
市長就任時に全370事業を対象に、担当課長が査定側に必要性を説明する形で総点検。「なぜ毎年やるのか」「参加者数は」と全事業に問いを立て、約2億円を削減。現在は審議会で進捗確認する形に移行。
CASE 2
施設廃止と代替措置のセット
温泉大浴場を備えた老人福祉センターを廃止。ただし「廃止するだけではサービス低下になる」と、活動の場を公民館等へ受け入れ転換。約3,000万円を捻出し、さらに建物を貸し付けて賃料収入も得る二段構え。
CASE 3
小学校の統廃合
1学年1学級規模の2校を1校に統合し、1学年2学級を確保する方針。10年前に一度見送った経緯があるが「これ以上待てない」と再度着手し、地元を含めた協議が進行中。
CASE 5
補助金を団体補助から公募型へ
「団体だから出す」をやめ、活動内容を審査する公募型に転換。方針提示の際は関係団体への説明を深夜まで重ねたとのことで、合意形成の困難さも率直に共有いただきました。
CASE 6
使用料の見直し
令和5年度から約2割の引上げ。コスト算出に基づく受益者負担の適正化として実施。
CASE 7
リバースオークション(電力調達)
複数社によるオークション形式の電力調達を近隣自治体と共同で実施。国際情勢の影響がなければ年間4,000万円規模の効果見込みだったとの説明(単月でも数百万円の減)。対象を清掃施設・公民館へ拡大予定。
CASE 8
働き方改革
時間外勤務の大幅な見直しにより、残業代約6,500万円を削減
CASE 9
職員数は「維持」する設計
行革=人減らしではなく、「一定の職員は今後も確保していく」方針。若手の民間転職や育休取得の増加を踏まえ、定数を上回る職員数を確保して職場を回す設計。
Q&A

質疑応答から

Q. 他自治体の先進事例は参考にしたのか。検討したが実施しなかったものは?(日髙議員)
A. 先進事例はほとんど参考にせず、ゼロベースの発想からみんなで知恵を出し合って作った。実施を見送った例もあり、高齢者関係の一部は議会調整や市民への影響を勘案して「見直しはしたが改定はしなかった」。学童保育の育成料は、待機児童の解消とセットでなければ理解が得られないため、解消を待って実施する判断。
Q. 改革を進めるうえでの市長の役割は?(髙橋議員)
A. 「やっぱりトップが大事。前面に立つ、これに尽きる」。補助金見直しでは市長自身が関係団体と直接向き合った。反対の声が集まりやすい場でも「引いたらいけない」「思い切りがないと絶対に無理」。
Q. 事業評価の「見える化」はどうしているか?(髙橋議員)
A. 約300ページの決算成果報告書で各事業の概要・成果を公表し、市民が閲覧できる。病院再編のような成功事例は、決算報告や広報の特集で扱うことが有効。
Q. 市長交代のリスクにどう備えるか?(鈴木議員)
A. 計画4年目の令和9年度に見直しを予定しており、市長選のタイミングを見据えた設計になっている。どこまで見直すかは今まさに議論中。
Q. あえて残したもの、行政が直接持ち続けるべき領域は?(鈴木議員)
A. 「聖域は設けず全部に手をつけた」が、関係機関との調整が困難な領域では見送った部分もある。行政が持つべき領域については「極端に民間へアウトソースできないところにこそ我々の存在意義がある」「DXやAIにリソースを使い、我々でなければ手を出せないことを見極める」「切るというより、やるべきことを精査していく作業」。
Q. 三郷市の状況共有(佐藤会長)
A. 三郷市に市立病院待望論があった中で、首都圏20km圏内で近隣に大学病院等が揃うため設置しない判断をしてきた経緯を共有。福祉・医療の公共性の高さと、市民への説明の重要性を相互に確認した。
川西市議会議場での創政MISATO所属議員
川西市議会 議場にて

視察概要・本ページについて

  • 日時:令和8年(2026年)8月4日(火)/視察先:兵庫県川西市議会/調査事項:川西市行政経営基本方針について
  • 参加:創政MISATO所属議員。川西市側は議会事務局・企画財政部企画政策課の皆様にご対応いただきました。この場を借りて御礼申し上げます。
  • 本ページは視察時の説明の聞き取りに基づく報告です。人口・経常収支比率などの基礎数値は、川西市・三郷市の公表資料(決算資料・住民基本台帳)で確認のうえ記載していますが、視察時の説明に基づく数値の一部は聞き取りベースのため、確認の結果、更新することがあります。
  • 最終更新:令和8年(2026年)8月

創政MISATOの視察活動

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