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視察報告

徳島市立図書館 視察報告
指定管理者制度を「質」で運用する

― 駅前図書館の仕様書・レファレンス・地域連携 ―

駅前の商業ビルに移転し、指定管理者制度のもとで18年目を迎える徳島市立図書館。司書比率60%以上おはなし会の1日2回実施を仕様書で義務づけ、レファレンスは「量から質」へ転換、イベントは実際の貸出につなげる。「日本一の読書のまち」を掲げる三郷市にとって、民間に任せながら質をどう担保するかの実例を学びました。

令和8年5月11日 徳島県徳島市 創政MISATO 会派視察
TAKEAWAYS

結論 ― 三郷で考えたい4つのこと

まず結論から。徳島市立図書館の実践を現地で見た私たち創政MISATOが、三郷市の「日本一の読書のまち」推進事業に置き換えて考えたい4つの論点です。

それぞれの根拠となった徳島市立図書館の実践を、以下で報告します。

ABOUT

徳島市立図書館とは ― 駅前商業ビルの中の図書館

徳島市立図書館(愛称:はこらいふ図書館)は、平成24年4月、旧施設の狭さと立地の課題を解消するため、JR徳島駅前の商業ビル「アミコビル」内へ移転しました。延べ床面積は約3,400平米(旧館の約3倍)、蔵書能力は約50万冊(約2倍)に拡充されています。

徳島市立図書館の館名サイン
アミコビル内の徳島市立図書館。愛称は「はこらいふ図書館」
3,400
延べ床面積(旧館の約3倍)
50万冊
蔵書能力(約2倍)
58万人超
移転年度の来館者数
18年目
指定管理者制度の運用

掲げるコンセプトは「人と文化が出会う駅前図書館」。資料の貸出にとどまらず、学習や情報交流の拠点としての機能を重視しています。それを示すのが学習席の利用状況で、令和3年度の2,391利用に対し、令和7年度は4,064利用(見込み)と大きく伸び、滞在型の図書館としての性格を強めています。

SPECIFICATION

仕様書による品質担保 ― 「民間に任せる」の中身

徳島市は、指定管理者との契約において、具体的な数値と活動要件を仕様書に書き込むことで、公の施設としての公共性と専門性を担保しています。民間に任せることと、質を落とすことは別だ——その設計思想が、条文の形で表れています。

任せ方を設計すれば、質は守れる。

仕様書に書き込まれている4つの条件

ボランティアが生む人材育成の循環

役割分担を明確にした結果、次のような循環が生まれています。幼少期におはなし会に参加した子どもが、中学生になって職場体験やボランティアとして戻ってくる。その経験が司書を志すきっかけとなり、専門職としての進学・就職につながった事例もある。ボランティアと協力した絵本ブックリストの作成など、地域ぐるみの読書推進にも広がっています。

徳島市立図書館の児童書コーナー
児童書コーナー。おはなし会は仕様書で1日2回の実施が義務づけられている
REFERENCE

レファレンスの質 ― 年2,000件から、年100〜200件へ

同館の最大の特徴は、レファレンス(調査相談)サービスの質にあります。特筆すべきは、件数を「増やす」のではなく「絞った」という判断です。

評価軸の転換
「受理件数」から「回答の質」へ
以前は年間約2,000件という受理件数(量)を重視していた。現在は「本の所在確認」のような簡易な問い合わせと、高度な調査を要する踏み込んだ調査回答を厳密に区別し、年間100〜200件程度の質の高いレファレンスに注力する体制へ転換。市民の課題解決に直結する回答を提供している。
全国的な評価
感謝状10回の受領
国立国会図書館「レファレンス協同データベース」への積極的な参画と登録実績が評価され、これまでに計10回の感謝状を受領している。
組織的な仕組み
平成26年度から続く専門研修
継続的な研修により司書のスキルアップを常態化。個人の能力に依存せず、組織として回答の品質を担保する仕組みが、全国的な評価につながっている。
COLLABORATION

地域連携と「出口戦略」

多様な機関と連携したイベントを、賑わいで終わらせず、確実に実際の貸出につなげる。同館は、その導線設計を徹底しています。

連携先連携の内容
徳島大学附属図書館連携協定に基づき、館内に「徳島大学コーナー」を常設
徳島ヴォルティス選手による推薦本の展示、メッセージ・試合結果の掲示
徳島地方法務局相続講座を毎年開催
徳島県信用保証協会女性経営者向け講座の実施
徳島市消防局・JR四国親子体験イベント、講話、鉄道史の紹介

イベントを貸出につなげる3つの手順

事前準備 イベントのテーマに関連する資料の副本(複本)をあらかじめ購入・確保し、貸出が集中しても欠品しないようにする。
資料展示 関連資料を会場のすぐ近くに展示し、参加者がその場で手に取れる動線をつくる。
情報提供 「徳島関連テーマ」「ビジネス支援」などに特化したパスファインダー(調べ方案内)を配布し、興味を書架へ導く。
ここが学びどころ

イベントの成否を参加者数だけで測れば、この3手順は不要です。「借りてもらう」ところまでを成果と定義しているからこそ、副本の事前購入まで踏み込む。指標の置き方が、現場の行動を変えている例だと受け止めました。

READING PASSBOOK

読書通帳 ― 記録が読書を続けさせる

同館では、借りた本の履歴を通帳の形で印字できる読書通帳を導入しています。銀行の通帳のように書名が並んでいくため、読んだ量が目に見える形で積み上がり、特に子どもの読書意欲につながります。

徳島市立図書館の読書通帳の表紙
読書通帳の表紙
読書通帳の中面。借りた本の書名が印字されている
借りた本の書名が日付とともに並ぶ
導入を考えるなら

読書通帳には、専用機器の導入費用に加えて年間リース料約22万円がかかります。効果が見込めるサービスだからこそ、費用対効果を精査したうえで、利用者負担を含めた持続可能な運営の形を設計しておく必要がある——三郷市で検討する際の前提だと受け止めました。

CHALLENGES

立地に伴う課題 ― 駅前・商業ビルの現実

駅前の商業ビル内という立地には、利便性の裏返しとなる構造的・環境的な課題もあります。三郷市が施設を検討する際にも、あらかじめ織り込むべき点です。

構造
床荷重の制限
ビル型施設特有の床荷重制限により、書架の増設や大幅なレイアウト変更が難しい。書架を増やせない中で、照明や背表紙の見せ方といった運用の工夫による視認性向上が課題となっている。
周辺環境
核テナント撤退の影響
かつての核テナント撤退によりビル全体の回遊性が低下。その後、別の百貨店が入居したものの空きスペースは残る。図書館自体が人を呼び込む集客装置としての役割を、より強く求められている。
アクセス
専用駐車場がない
専用駐車場を持たず、近隣の有料駐車場に依存している点は最大の弱点。利用者からの無料化要望は強い。駅前立地における「車社会への対応」は、三郷市の施設検討でも重要な論点になる。
徳島市立図書館の一般書架
一般書架。床荷重の制約から書架を増やせない中、照明や見せ方の工夫で視認性を高めている
CONCLUSION

視察を終えて

図書館の価値を決めるのは、
蔵書数というストックではなく、専門性と連携の質

指定管理者制度のもとであっても、明確な仕様設定と継続的な人材育成によって、全国トップレベルの専門性を維持できる——徳島市立図書館は、そのことを実例で示していました。

三郷市は2013年の「日本一の読書のまち」宣言以来、環境整備に力を注いできました。現在は、市民の日常的な読書習慣の定着という質的な深化のフェーズにあります。今回得られた知見を、今後の予算審議や政策論議の材料としてまいります。

徳島市立図書館を視察した創政MISATO所属議員
徳島市立図書館にて

視察概要・本ページについて

  • 視察日:令和8年(2026年)5月11日/視察先:徳島市立図書館(徳島県徳島市元町1丁目・アミコビル内)
  • 調査事項:指定管理者制度の運用によるサービス品質の担保と、地域連携の具体的手法について
  • 参加:創政MISATO所属議員4名(佐藤裕之・髙橋誠一・日髙千穂・鈴木優作)。ご対応いただいた徳島市立図書館の皆様に御礼申し上げます。
  • 本ページは視察時の説明の聞き取りに基づく報告です。数値の一部は聞き取りベースのため、確認の結果、更新することがあります。
  • 最終更新:令和8年(2026年)8月

創政MISATOの視察活動

全国の先進自治体に学び、三郷市の政策に活かします。他の視察レポートもご覧ください。