駅前の商業ビルに移転し、指定管理者制度のもとで18年目を迎える徳島市立図書館。司書比率60%以上やおはなし会の1日2回実施を仕様書で義務づけ、レファレンスは「量から質」へ転換、イベントは実際の貸出につなげる。「日本一の読書のまち」を掲げる三郷市にとって、民間に任せながら質をどう担保するかの実例を学びました。
まず結論から。徳島市立図書館の実践を現地で見た私たち創政MISATOが、三郷市の「日本一の読書のまち」推進事業に置き換えて考えたい4つの論点です。
それぞれの根拠となった徳島市立図書館の実践を、以下で報告します。
徳島市立図書館(愛称:はこらいふ図書館)は、平成24年4月、旧施設の狭さと立地の課題を解消するため、JR徳島駅前の商業ビル「アミコビル」内へ移転しました。延べ床面積は約3,400平米(旧館の約3倍)、蔵書能力は約50万冊(約2倍)に拡充されています。
掲げるコンセプトは「人と文化が出会う駅前図書館」。資料の貸出にとどまらず、学習や情報交流の拠点としての機能を重視しています。それを示すのが学習席の利用状況で、令和3年度の2,391利用に対し、令和7年度は4,064利用(見込み)と大きく伸び、滞在型の図書館としての性格を強めています。
徳島市は、指定管理者との契約において、具体的な数値と活動要件を仕様書に書き込むことで、公の施設としての公共性と専門性を担保しています。民間に任せることと、質を落とすことは別だ——その設計思想が、条文の形で表れています。
任せ方を設計すれば、質は守れる。
役割分担を明確にした結果、次のような循環が生まれています。幼少期におはなし会に参加した子どもが、中学生になって職場体験やボランティアとして戻ってくる。その経験が司書を志すきっかけとなり、専門職としての進学・就職につながった事例もある。ボランティアと協力した絵本ブックリストの作成など、地域ぐるみの読書推進にも広がっています。
同館の最大の特徴は、レファレンス(調査相談)サービスの質にあります。特筆すべきは、件数を「増やす」のではなく「絞った」という判断です。
多様な機関と連携したイベントを、賑わいで終わらせず、確実に実際の貸出につなげる。同館は、その導線設計を徹底しています。
| 連携先 | 連携の内容 |
|---|---|
| 徳島大学附属図書館 | 連携協定に基づき、館内に「徳島大学コーナー」を常設 |
| 徳島ヴォルティス | 選手による推薦本の展示、メッセージ・試合結果の掲示 |
| 徳島地方法務局 | 相続講座を毎年開催 |
| 徳島県信用保証協会 | 女性経営者向け講座の実施 |
| 徳島市消防局・JR四国 | 親子体験イベント、講話、鉄道史の紹介 |
イベントの成否を参加者数だけで測れば、この3手順は不要です。「借りてもらう」ところまでを成果と定義しているからこそ、副本の事前購入まで踏み込む。指標の置き方が、現場の行動を変えている例だと受け止めました。
同館では、借りた本の履歴を通帳の形で印字できる読書通帳を導入しています。銀行の通帳のように書名が並んでいくため、読んだ量が目に見える形で積み上がり、特に子どもの読書意欲につながります。
読書通帳には、専用機器の導入費用に加えて年間リース料約22万円がかかります。効果が見込めるサービスだからこそ、費用対効果を精査したうえで、利用者負担を含めた持続可能な運営の形を設計しておく必要がある——三郷市で検討する際の前提だと受け止めました。
駅前の商業ビル内という立地には、利便性の裏返しとなる構造的・環境的な課題もあります。三郷市が施設を検討する際にも、あらかじめ織り込むべき点です。
図書館の価値を決めるのは、
蔵書数というストックではなく、専門性と連携の質。
指定管理者制度のもとであっても、明確な仕様設定と継続的な人材育成によって、全国トップレベルの専門性を維持できる——徳島市立図書館は、そのことを実例で示していました。
三郷市は2013年の「日本一の読書のまち」宣言以来、環境整備に力を注いできました。現在は、市民の日常的な読書習慣の定着という質的な深化のフェーズにあります。今回得られた知見を、今後の予算審議や政策論議の材料としてまいります。
全国の先進自治体に学び、三郷市の政策に活かします。他の視察レポートもご覧ください。